北がわ一雄|KAZUO KITAGAWA

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新春対談

地域社会による人間教育と体験学習

弓岡  国づくりの根幹の問題として、治安の問題も大切だと思いますが、ここ5~6年、治安は非常に悪くなってきていますね。これは外国人のうちの悪質な人が、日本にたくさん入ってくることも影響していると思いますので、こういう人達が入国すること自体を防御する方法も論議しなければなりません。
また、先生のおっしゃるとおり、日本人のモラルそのものも低下していますね。モラルについては教育の問題を抜きには語れないと思うのですが、政党、国会議員の先生方におかれても、主義主張に関係なく、取り組んで頂きたいと、痛切に思います。

北側  私は、戦争の傷跡が子供のころの記憶として残っている世代です。私が生まれたのは桃谷ですが、桃谷の駅を降りたら、白い服を着た傷痍軍人さんがおられたり、戦争で建物が壊れたまま、残っているような記憶があるのですが、私より若い世代、さらに若い今の子供たちは、直接体験をする機会が非常に限られてきています。テレビ、テレビゲーム、パソコン、漫画、すべて間接体験なのですね。
例えば、自らお米を作ったり、野菜を作ったりする。また、遊び道具にしても、自分たちで知恵を出して考えて作ることはなくて、すべて与えられて、自らが直接経験する機会が少ない。
家族形態も、昔はおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に住んでいる。あるいは近所にいるという中で、自分のおじいさんとかおばあさんの死に際や、老いていく姿を直接見て、時には一緒に介護のお手伝いをする。また、隣近所にいる自分のおばさんの子育てを目の当たりにして、自分でその赤ちゃんを抱く。そういう機会がたくさんあったのですが、今、そんな機会はほとんど無いですね。そういう意味では、今の子供たちは豊かになっているのですが、反面、不幸な部分があります。
それでは、昔みたいな大家族形態に戻せるかというと、なかなか容易ではありません。したがって、地域社会がひとつになって、子供たちを育て、教育をしていくことが重要です。家庭教育はもちろん、学校教育も柱なのですが、もう一つ地域社会で子供たちを育て、教育していく仕組みを作っていかなければならないと思います。

弓岡  そういう心のぬくもりというか、地域社会の中で、お互いに話し合う機会が、現在は非常に少ないですからね。

北側  例えば地域社会の中には、色々な企業もあれば、色々な経験をされた方もいらっしゃる。そういう方々に協力いただき、体験学習をもっと積極的に取り入れたらいいのではないかと思います。製造業では、物が作られていく現場や、そこで工員さんたちが汗を流して働いている姿をきちんと見せる。朝礼も子供たちに並ばせて、会社の社長からびしっと厳しい言葉を言ってもらう。そういうことが大切な時代に入ってきているのではないかと思います。
我々は家庭教育だ、学校の先生だと言いがちです。確かに、それもとても大切なのですが、昔とは家族形態、社会情勢が変わり、豊かな社会になっていることを考えると、もう一度、地域社会全体で子供たちを育てて、教育していくようなシステムが、大切だと思います。

弓岡  先日、クライアントに用事があって、午前8時ごろに行ったのです。朝が早いから閉まっているかと思いましたが、全員出勤していました。何をしているかと言えば、まず、最初にやるのは、全員で自分の使っているトイレのふき掃除を、便器から床までするということです。これは、掃除をしてきれいになるだけの問題ではなくて、掃除をすることによって、みんながある種の誇りを持ち、同時に規律正しく物事をやっていくことにつながるということで、私は感心いたしました。

北側  大阪でチェーン店のお好み焼き屋を経営している社長もトイレ掃除は大事だと言っておられ、心斎橋の商店街の中にある共同便所を商店街の人たちが一緒に掃除しているのです。また、子供たちが体験学習に来たとき、その社長はトイレ掃除をやらせたらしいのです。そうしたら、教育委員会から、「子供たちにトイレ掃除なんかさせて。そんなために体験学習させたのではありません」と言われたらしいのです。これは、教育委員会の考え方も少しおかしいと思います。
会長がおっしゃるとおり、自分の会社のトイレをきれいに掃除する人はたばこのポイ捨て等は絶対にしません。たばこのポイ捨てをする人は、だれが拾うとか、何にも考えていないのです。堺の仁徳天皇陵の周囲を、ロータリアンが社会奉仕でごみ掃除しているのですが、私も参加しています。そうしたごみや、たばこの吸い殻が大変多いのです。それを拾う作業をやっている人は、絶対たばこのポイ捨てなどはできません。

弓岡  あるテレビ番組をみていると、落書きというものは一斉に消してこそ値打ちがあるということで、町内会で有名な落書きの場所を掃除しようと、参加者を募集したのです。そうしたら、その町内に関係ない若い人達も、30~40人が一斉に落書き消しをしたのです。すると、それ以後、町から落書きが消えたということです。やはり皆、これではいけないという気持ちがあって、大勢で一斉に、そういうことをすることによって、気持ちも良くなるのだと思います。

北側  先ほどのモラルの話ですが、自分だけだったらいいだろうとか、この程度だったらいいだろうという考えをなくしていくことが、これからの社会を考えたらすごく大事だと思うのです。大人がそういうことをきちんとやっていくことが、そのまま子供たちに反映していくことになるのです。

弓岡  社会全体で子供達を育てていくということを考えた場合、メディアの責任も大きいと思います。
昨今の報道を見ていますと、テロが起こればテロの話ばかり、また、小中学生が重大な事件を起こしたら、その話ばかりで、良い話はほとんどない。これは逆に悪いことに対しての感覚をマヒさせ、助長するような虞があると思います。私は、学校教育だけを一生懸命改善しても駄目で、ある程度、報道もあり方を考えることも必要ではないかと思います。

北側  日本はやはり自由な社会ですから、報道の自由、表現の自由というのは最大限尊重しなければいけない。
ただ、こういう情報化の時代の中で、先ず報道する側の倫理というものはとても大切だと思いますし、受け取る我々の側も、報道、情報発信に対しても取捨選択できる能力を養うこともとても大切だと思うのです。
これはメディアリテラシーというのですが、学校教育の中でそういう能力を養うことも大切だと思います。

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