

小寺 今回の事故の件ですが、大臣が適切に対処していただいているので、遺族の立場としてもほっとしています。私としては、今回は信楽事故の場合と違ってJR西日本が責任を争うという事態にはならないと思っています。いろんな解決の仕方がこれから出てくるでしょうが、私は、弁護士として、遺族や被害者の方々に緩やかな連帯を呼びかけ、その中で、いろいろな解決策を提示していけたらと思っています。早く解決することを望んでおられる人、弁護士を通して交渉する人、なかなか気持ちの収まらない人、それぞれを振り分け、方向づけをしてあげる責任があると思っています。遺族の集まりでは、亡くなった方々の慰霊、事故の原因の解明、責任の取り方、再発防止策、安全についての考え方を話し合えたらと思っています。でなければ、混乱が生じるのではないかと危惧しているのです。
北側 亡くなられた方107人、怪我をされた方も500人以上。まだ入院されている方がいらっしゃいます。今日も一昨日も垣内さんには言っていますが、これからが始まりです。
小寺 本当にそう思います。私は、マスコミを通してしか知りませんが、今回の事故後にJRの言っている安全策とか気構えとか、4年前の信楽事故のときに言っていることと全く同じではないかと感じています。この4年間何をしてきたのか、と思います。鉄道という日本の基幹を支える事業をやっておられて、ですからね。むしろ、とことん被害者と同じ痛みを持って事にあたって欲しいですね。下手に辞任なんかしてほしくないと思っています。
また、今、大臣の管轄下に航空鉄道事故調査委員会が頑張っておられますが、できれば、私は、北側大臣のときにしかできない、独立性・中立性を持った、国民の納得のいく機関にまでして欲しいと思っています。せっかくお会いできましたので言わせてもらいますが、北側大臣には、利用者である国民の視点に立っての安全策の大英断をお願いしたい。
北側 事故調査委員会は、今も一応八条機関(※)ではあるんです。しかし、鉄道の方は最近なんですね。それまでは航空しかなくて、鉄道の方ができたのは信楽の後なんです。航空の方は海外の例もあったり、日本でも大きな事故があったりして割としっかりしています。しかし、鉄道の方は弱いんです。ところが、この鉄道に関しては、JR西日本はもちろん、土佐くろしお、東武鉄道の踏切事故と続いており、体制が非常に弱いので、しっかり強化することは既に決めさせていただきました。おっしゃるとおり、できるだけ国土交通省にものを言えるような体質にしたいと思っています。こうした事故は、結局はヒューマンラーの場合が多いと思います。これはいくらバックアップしても、事故が起こる余地は残ります。人間がやることですから。だからこそ、ヒューマンエラーについて、より科学的に研究する必要があると考えています。むしろ、ヒューマンエラーがあっても事故につながらない、さまざまなハード・ソフトの体制を充実させたいと思っています。
小寺 私も医療過誤事件をよくやりますが、いわゆる「ヒヤリ・ハット」、大きな事故は小さなミスの積み重ねですからね。それが最後は生命に繋がってしまう。また、私はある会社の社外監査役をやっていますが、企業経営も同じです。社員一人一人の小さなミスが会社の命取りになる可能性を持っていますので。そういう意味で、今回の事故の責任を考えるとき、ひとりJRだけの責任に矮小化すべきでないと実感したんです。
北側 JR西日本には、今後もしっかり対処し、原因究明、再発防止に全力で取り組んでまいります。
ただ、今、私の口から申し上げるべきではないのかもしれませんが、単に事業者だけでなく、社会全体の安全に対する意識が弱くなっているんじゃないかという気がするんです。私が子どものころなど、大阪では、河川の決壊や浸水がありました。今は、河川も整備されて、そういう問題が減っています。それ自体はいいことですが、逆に、防災に対する意識が弱くなってしまったように感じます。交通の分野でも、技術が進歩して機械がある程度やってくれるようになったために、安全が当たり前のものだと感じてしまうようになっていたと思います。今回の件も、こういう安全に対する意識が弱くなっていたことのひとつの警告ではないかと思うんです。
もう一つは、もっとスローライフでいいのではないかと思います。事業者にもプレッシャーがかかっていて、例えば5分遅れると不平が出るわけです。社会全体も利便性をあまり追及するのではなくて、安心・安全をより重視し、もっとゆったりとした生活を志向していく必要があるのではないかと感じています。
小寺 おっしゃるとおりです。事故後、電車の遅れるケースが多くなっていますが、これに対して利用者が怒っている姿をよく見かけます。人間社会では、事故は避けられませんが、そういうときに、人として、生活のあり方、社会のあり方をどう受け止めていくかを考えないといけないと思います。“教訓”とはよくいいますが。
北側 そういう意味では私の立場は責任が重いと考えています。私の立場だから、前に進めることができますので、しっかり役割・責任を果したいと思っています。
小寺 今回の事故に関しての大臣の発言は気をつけてお聞きしております。粉砕痕の話に対しても早い段階でおっしゃってましたね。私達が体育館の中で安否を確認しているときに置石の話がありましたので、私はJRの発言にとても違和感を覚えました。
北側 私も、当事者が言うべきことでない、と思いました。それで、「今そのような話をするのは如何なものか。」と申しました。
小寺 あれは、さすがだと思いました。
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